研究開発Research & Development
「ジーワンボード(Z1ボード)」は、アキレスならではの発泡技術を駆使して開発された硬質ウレタンフォーム断熱材です。発泡プラスチック系としては業界最高水準の断熱性能が最大の特長。同時に優れた遮熱機能も持つため、四季による気温の変化が大きい日本の住宅や建築に適した断熱材として幅広く利用されています。
本当にこの性能が限界なのだろうか?
――アキレスでは、社員の純粋な探究心が技術革新をもたらすことが少なくありません。
ジーワンボードもその一つです。2006年に発売したウレタンフォーム断熱材「キューワンボード」を研究製造する過程で、一人の研究員が「ウレタンフォームの断熱性能はもっと高められるのでは?」と、自身の開発テーマ外で新たな可能性を探り続けました。断熱材の性能を高めることは冷暖房機器の使用抑制につながり、省エネルギーや環境対策にも結びつきます。
日本の住宅の省エネルギー促進に向け、「HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)」が発足したのが2009年。やがてジーワンボードとして世に送り出される製品の種は、2008年頃にはすでに撒かれています。
ジーワンボードが象徴するように、アキレスの製品やサービスは、1947年の設立以来、半世紀以上にわたり積み重ねてきた技術力や開発力に加え、世の中の流れの先を見越す力によって生み出されてきました。
キューワンボードの性能も非常に高いものです。0.021 W/(m・K)という熱伝導率はウレタンフォーム以外の素材でできた多くの断熱材よりも低い水準であり、熱を通しにくい製品として高い信頼を得ています。面材には赤外線を反射して遮熱性能を発揮するアルミ箔を使用し、夏場は冷房負荷を減らす性能も持っています。
開発を進める上で一つのポイントとなったのが原料の選択でした。ウレタンフォームは通常5〜10種類の材料を化学反応させ、そこで発生する炭酸ガスがふくらんででき上がります。アキレスの研究員は常識にとらわれず、通常では使用されない意外な材料に注目し、その発想が新製品開発のブレイクスルーを導きました。
意外な材料を使って熱伝導率を下げるという方向が見えると、2014年には本格的なプロジェクトチームが発足します。研究開発本部だけでなく、生産技術、施設技術、品質保証など、各部門のエキスパートが、より上質な硬質ウレタンフォーム断熱材をつくるために、それぞれの知見を持ち寄りました。
面材の遮熱効果はキューワンボードを開発したときの技術を磨き上げることにしました。アルミの面材は遮熱効果を持つうえに、断熱材の劣化を抑える役割も果たします。長期的な品質の高さを追求するのは、アキレスの社風の一つでもあります。
ウレタンフォームの性能を更新するため、プロジェクトチームは「セル」と呼ばれる気泡をいかに小さくするかに注力しました。セルが小さいほど、そして、それぞれが均一であるほど、熱を通しにくくなるからです。
同時に、セルのなかに発泡剤を閉じ込める技術を強化すべく試行錯誤を重ねました。発泡剤は断熱性能を持つためです。セルが小さければ発泡剤も拡散しにくくなり、セルの微細化と、その小さな穴に発泡剤を封じ込める技術の向上は、まだ見ぬ理想のウレタンフォームを形にするために不可欠な工程でした。
実験と検査と性能測定を繰り返す日々で、特に大きな苦労を要したのは、最適なウレタンフォームを新たに生み出すための材料の配合です。
数種類の原料をどの比率で化学反応させれば、セルが小さくなり、均一になり、発泡剤も閉じ込められるのか。どうすれば理想的な強度や量産化できる成型性にたどり着けるのか。材料の選定を何度も見直しながら、1000パターンを超える配合を試作しました。一日で試せるのは数パターンだけであるため、配合設計はまさに地道で根気がいる作業でした。
プロジェクトチームの発足から3年。生産工程も一つずつ見直しながら、2017年に従来の製品の性能を上回る硬質ウレタンフォーム断熱材ができ上がりました。
セルの微細化と均一化、そしてそこに発泡剤を閉じ込めるうえでは、やはりアキレスらしさが大きく生きました。繊細な発泡技術と、ウレタンフォームの配合技術と、それを理想の形に仕上げる成型技術を高い次元で融合できた製品と言っていいでしょう。
熱伝導率の0.018W/(m・K)は業界最高水準のもの。ウレタンフォームの限界を突破してみせた製品の名前は、社内公募から「ジーワンボード(Z1ボード)」に決定しました。優れた断熱性能と遮熱機能を併せ持つため、「Z」には「Zero Energy」という思い、「1」には「ウレタンフォームではナンバーワンの性能を持つ」という誇りが込められています。
2017年10月30日から販売を始めたジーワンボードは高性能ゆえ、お客様から「もっとボードを厚くしたい」「もっとボードを薄くしたい」というさらなる期待を寄せられています。そうした需要にうれしさを感じながら、アキレスの担当者たちは、ジーワンボードの技術は、建材以外にも展開できると考えています。一定の温度を維持する性能は、保温車や冷蔵庫にも生かされるはずです。それぞれのニーズに応え、新たな可能性を引き出すべく、アキレスは今日も挑戦を続けています。
研究開発本部
産業資材開発部 断熱資材チーム
小池 大和
会社が積み重ねてきた技術、部の垣根を超えたメンバーの知見、幅広い年代の意見を掛け合わせることで新しい製品を作り上げることができました。こうした「掛け算の力」こそアキレスらしさだと感じています。ジーワンボードに限らず、誰もが「最高水準のものを必ず完成させる」という同じ方向を目指す日々はとても充実しています。ウレタンフォームに関しては、断熱性に加え、難燃性能も向上させて、安全性も追求していきたいと考えています。